「事業承継」という言葉を、今後広く一般の人も目にする機会が増えてくると思います。「事業承継」というと、親族内、親族外。そして親族外でも、社内での承継、第三者への承継などがあります。
ただどうしても、「承継」の部分ばかりに目が行きがちです。第三者への事業承継としてM&Aなんていう言葉が出てくると、なおさら「承継」する部分に目が行きがちです。
その前に、知って頂きたいのは、「さぁ承継しよう」と言って、1年や2年で事業が円滑に承継できるというものではないということです。短くて5年、承継までに10年は準備期間が必要だと考えてほしいです。
そして、中小企業の事業承継であれば、長年に亘る黒字経営の先は別としても、「経営改善」の先に事業継続性の維持があり、その選択肢として「事業承継」があると考えてほしいですね。
現状の本業を見直さずに、突然降って湧いたように「承継」の局面に入ると、多くはリスクを抱えたままの状況で進んでいってしまいます。そうなると当事者である中小企業が主導となることなく関係者の思惑(おもわく)で「事業承継」が進んでしまいます。
本業の見直しや整理、銀行借入金をはじめとする債務の見直しや整理(ここでいう債務の整理は法的な債務整理のことではなく、見直し)を行ない、所有不動産の状況の確認(時価評価など)に加え、税務面での準備など、あくまでも中小企業自身が主導となって事業承継を進める状況を作るべきです。
そして、あらためて、誰にどのように承継していくのかを考えれば、それは少し時間をかけて準備をする必要があるというのはわかってもらえると思います。
いま、中小企業の経営者(60歳以上)の人は、イコール創業者という方が少なくありません。創業者としてここまで事業を継続してきたということは、経営者の事業に与える影響度合いが少なくありません。その創業経営者が承継するわけですから、より丁寧に、円滑に行なうべきです。
「事業承継」という言葉が先走りすることなく、まずは早めに現状の本業を見つめ直すことが肝要だと思います。
一見有効な事業承継手段だと思っても、本業の見直しが出来ていなければ、円滑な事業承継に繋げることは容易なことではないと思います。