久々に書籍の紹介です。少し前に共同経営者から「ポンッ!」渡された一冊の本です。「ドキュメント 金融庁vs地銀 生き残る銀行はどこか」(読売新聞東京本社経済部 光文社)「金融庁vs地銀」(光文社HPより)
森長官の怪物っぷりをゴシップ的に書き上げているという、ありがちなものではなく、バブル崩壊以降、金融庁に脈々と流れる本質的な部分が伝わる本でした。(まだ読破しておりませんが、とても楽しい本です)本質的な部分とは「地銀(地域金融機関)は中小企業(地域)の役に立つことを優先すべき」というものです。
これは、コンサルタントとして中小企業をサポートしている中で、中小企業に対して思うことと同じです。自社の利益のみに目を奪われ、それのみを優先している企業は早晩衰退します。ましてや、どの業界も競合が激しいことには変わりはないわけです。そんななか、価格競争(銀行でいう金利競争)や薄利多売(銀行でいう過度な融資推進)を進めていけば、最終的には資本力がある企業が勝つのです。
自社は、何のために事業をしているのか、顧客(地域)に貢献出来ているのかの自問自答を繰り返し、ファン(固定客)を作り出していくことで、安定した事業継続に繋がっていくわけです。「情けは人の為ならず」ちょっとニュアンスは違うかもしれませんが、生っている作物を探しては刈り取る、そんなことばかりしていては、力あるものに市場を奪われていくわけです。今は、何の利益に成らずとも、将来のために種を蒔く動きを忘れてはなりません。
この誰でもわかるようなシンプルな発想が、わかってはいても出来ないと言います。そうでしょうか?
銀行時代に在籍していた企業支援部署も直接的に足元の利益を生まないことから、一般的には「コスト課」と揶揄されていましたし、金融機関の内部では、やはり融資実績を上げた者などが評価される組織体制となっていました。これについても金融庁は銀行内部の評価体制を変更してまでも「地域に貢献できる」銀行であるべきだと、金融検査マニュアルを通して、何年にも亘って伝えてきています。
いま、銀行は統合・合併・連携など、「生き残りをかけた再編」が行なわれていますが、事業規模のみを大きくしても、事業の方向性、即ち地域金融機関の役割を明確にし、動き出さなければ、本質的な力を生み出すことは出来ないと考えます。
立場上、金融庁長官では無いため、このような心配事は元銀行員の単なる杞憂に終わるしかないですが、「地域のための地域金融機関」が多くなってくれれば、その地域の中小企業の多くは、事業を見つめ直すことが出来る。それは間違いの無いところと考えます。
光文社の関係者では無いですが、金融機関に勤める方々や、金融業界、銀行業務に興味のある方々は、ご一読されることをお薦めします(^-^)